石畳の小さな温泉街 湯宿温泉


訪問日:2016/1、他



三国街道を赤谷川に沿って北上し、旧新治村の支所を数百メートル過ぎた所に「湯宿温泉」と呼ばれる小さな温泉街がある。 大通りに隠れるようにして宿が立ち並び、気に留めてなければ知らずに通り過ぎてしまうだろう。 事実、群馬県民でも湯宿温泉の名を知らぬ者は多いことと思う。

私が初めて湯宿に訪れた時は「こんな場所に温泉街があったのか」と驚いた。 石畳が敷かれた風情ある小路は妙に落ち着き、懐かしささえ覚え、穴場を見つけたような嬉しい気分になった。 そして共同浴場に入り、掛け流しの熱々の芒硝泉に首まで浸かるとこれがまた丁度良い。 くど過ぎず、軽すぎない絶妙なバランスの湯。
それ以来、すっかり湯宿温泉の虜となり、宿泊は二度、日帰り入浴では数えきれないくらい訪れるまでに至った。

何度も通ってる湯宿温泉、源泉の情報の整理と、いつも低価格で入浴させて貰っているお礼も含めて、この機に湯宿温泉の記事を書くことにした。






表題の通り、湯宿温泉は小さな温泉街。
石畳の通りは場所によっては車も通れぬほど狭く、しかしそれが幸いして国道の喧騒から外れた静かな温泉街を形成している。
共同浴場に浸かっていると「カコン、カコン」と石畳を歩く下駄の音が響き、それがまた情緒を感じさせる。






一歩裏路地に入れば、小説の世界のような独特な雰囲気を醸し出している。
決して嫌な空気ではなく、落ち着く小路。






私が初めて湯宿温泉に訪れたとき、右も左も変わらぬまま細い石畳道を歩いていると、写真の小さな広場に行き当たった。 広場には薬師様が祀られ、湯宿温泉の歴史を説明する看板と、温泉客が休憩できるようなベンチが置かれている。 広場の先の路地を覗くと、木造の建屋を正面にして額には「窪湯」と大きく書かれていた。 「ここが共同浴場か」と、恐る恐る扉を開けると誰もおらず、私は貸切の湯船で思い切り湯を満喫した。
そして入浴後、広場のベンチで黄昏ながら火照った身体を冷ます。 この狭っ苦しく暗い路地は外界と切り離され、湯宿温泉独特の佇まいを見せていた。

その時の空気が今でも頭に色濃く残り、不思議と何度も訪れたくなるのだ。






湯宿温泉は、六つの旅館と、四つの共同浴場がある。
旅館はどれもリーズナブルで泊まりやすく、夕食後に共同浴場巡りをするのも魅力の一つ。 時間制限があるものの、共同浴場は僅か100円で入浴できる

まずはその四つの共同浴場を順に紹介したいと思う。







窪湯共同浴場

窪湯源泉を引く、湯宿温泉を象徴付ける共同浴場。
共同浴場の中でも一番湯船が大きく、初めて湯宿に入るなら窪湯をお勧めする。
どの共同浴場でも言える事だが、高温の源泉がドボドボ投入され湯は熱々。







小滝の湯共同浴場

小滝源泉と窪湯源泉のブレンドの湯を使う共同浴場。
窪湯と50m程度しか離れておらず、源泉も違うので利き湯も楽しめるだろう。
湯船は小さいがあまり混雑しないのでゆっくり浸かれる。
窪湯と比べてあっさり目のお湯。







竹の湯共同浴場

温泉街でも一番外れにある共同浴場。
窪湯源泉を引き、泉質自体は窪湯と変わらない。
住宅地に囲まれた場所に位置し地元の方が生活用として頻繁に使用し湯船も小さいので、外来入浴は竹の湯ではなく窪湯に行くのが好ましい。







松の湯共同浴場

基本的に地元民専用で鍵が開いている事も少なく、湯宿温泉の中で最も入るのが難しいレアな湯。
窪湯源泉を無濾過で引きており、窪湯源泉にも増して湯の香りや浴感を楽しめる。
浴槽の下部が柵状になっており、よく見ると隣の女湯と浴槽が繋がっている。
つまり柵の隙間に足を入れればそこはもう女湯なのだ。
また、脱衣所と浴室の区切りが無く、少々変わった造り。






湯宿のような小さな温泉地に共同浴場が四つもあるのは異例であるが、裏を返すと地元の方にとって不可欠な、とても大切な物と言える。
共同浴場が外来者も利用できるのは地元の方々のご厚意、共同浴場を利用の際には貰い湯の気持ちでマナーを守るのは勿論の事、必ず管理費を100円以上を入れるようお願いしたい。
マナーの悪い人が一部でもいれば使用禁止になるのは確実であり、それは絶対に避けねばならない。






湯宿温泉で宿泊すると、良い意味で「コンパクトでまとまった温泉地」という印象を受ける。
温泉街を形成するために各旅館の間の連携は密に取られ、各旅館、ひいては地元民も一丸となって宿泊客をもてなしてくれる。

顕著な例として、上記写真の「ゆじゅく茶や」を紹介する。
ゆじゅく茶やは温泉客向けの無料の休憩所、運営は旅館の人たちが持ち回りで行い、宿が一段落する昼から15:00頃まで開いている。
私が茶屋の前の通りをうろうろしている時、「よかったらお茶していって下さい」と快く迎え入れてくれ、お茶菓子やコーヒーを出してくれた。もちろんお金は取らず、全て宿側からのご厚意である。






「ゆじゅく茶や」では宿の主人が直接もてなしてくれるので、温泉について何でも聞くことが出来た。 「どこの旅館がどの源泉を引いているのか」、「昔の温泉街はどんなだったか」、更には湯本館の源泉湧出池を泊まってもいないのに見せてくれた。

「宿と客」のような線を引いた堅苦しいおもてなしではなく、「人と人」との距離が近いおもてなし、私は湯宿温泉を一層気に入った。



ここで見聞した情報を下記にまとめる。
共同浴場や旅館の源泉を中心に調べたので何かの参考になれば幸いである。




 共同浴場


    窪湯共同浴場


    源泉 : 窪湯源泉
    時間 : 16:00~21:00
    料金 : 100円以上

    小滝共同浴場


    源泉 : 小滝源泉と窪湯源泉のブレンド
    時間 : 16:00~21:00
    料金 : 100円以上

    竹の湯共同浴場


    源泉 : 窪湯源泉
    時間 : 16:00~21:00
    料金 : 100円以上

    松の湯共同浴場


    源泉 : 窪湯源泉(無濾過)
    時間 : 16:00~21:00
    料金 : 100円以上


 旅館


    大滝屋


    源泉 : 大滝源泉、窪湯源泉(それぞれ別の浴槽に注がれている)
    宿泊 : 6000円~
    立ち寄り湯 : 500円
    公式サイト : http://www.yujuku-onsen.com/

    湯本館


    源泉 : 洗湯源泉
    宿泊 : 8550円~12750円
    立ち寄り湯 : 600円
    公式サイト : http://www.yujuku-yumotokan.com/

    ゆじゅく金田屋


    源泉 : 窪湯源泉
    宿泊 : 9600円~10650円
    立ち寄り湯 : 550円
    公式サイト : http://www.yujuku-kanetaya.com/

    太陽館


    源泉 : 窪湯源泉
    宿泊 : 8550円~16950円
    立ち寄り湯 : 600円
    公式サイト : http://www.taiyoukan.com/

    みやま荘


    源泉 : 窪湯源泉
    宿泊 : 5850円~
    立ち寄り湯 : 650円
    公式サイト : http://www.miyamaso.net/

    常盤屋


    源泉 : 窪湯源泉
    宿泊 : 5500円~
    立ち寄り湯 : 設定なし
    公式サイト : 無し


     ※宿泊料は手元のパンフレットによる。要問合せ。


 源泉


    窪湯源泉


    泉質 : ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
    特徴 : 湯宿温泉で最も使用されている湯宿を代表する源泉。軽いタマゴ臭を持ち、肌に染み込んで行くような湯。
    利用施設 : 湯宿全域で使用

    洗湯源泉


    泉質 : ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
    特徴 : 私は入浴した事が無いが成分表を見ると「窪湯源泉より多少濃い」といった感じ。基本的には窪湯源泉と同じだと思う。
    利用施設 : 湯本館の独自源泉

    小滝源泉


    泉質 : ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
    特徴 : 成分的には窪湯源泉と大差が無いが、臭いが弱く、湯も澄んでいる。
    利用施設 : 小滝共同浴場で小滝源泉と窪湯源泉を混合して使用している。

    大滝源泉


    泉質 : カルシウム-炭酸水素泉(聞いた話によると)
    特徴 : 湯宿でここだけ炭酸水素泉。窪湯源泉などに比べ湯上りはサラリとし、肌がツルツルになる。無味無臭透明。
    利用施設 : 大滝屋旅館(湧出量が少ないので一つの湯船にしか入れていない)


    窪湯源泉(無濾過)


    泉質 : ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
    特徴 : 窪湯源泉は一度タンクで貯められ、濾過された後に各宿に配湯しているが、松の湯共同浴場だけは濾過していない窪湯源泉を直接配湯している。成分はもちろん窪湯と同じだが、不純物が多いためタマゴ臭を始めとする、温泉の匂いが強く感じられる。
    利用施設 : 松の湯共同浴場
















湯宿温泉と言えば、漫画家・つげ義春を取り上げない訳にはいかない。
つげ先生は俗にいう「ボロ宿」を好んで泊まり、その体験を元にした漫画を描いている。
代表作の一つである「ゲンセンカン主人」は湯宿温泉の大滝屋旅館での体験を元になっていると言われ、その他エッセイなどにも湯宿の話が度々登場する。
そんな事から、湯宿温泉はつげ義春の聖地としての側面もあり、つげマニアが聖地巡礼へ訪れる事も少なくない。


下記につげ先生の湯宿の紀行文を一部引用させて貰う。


路地の奥まったところに宿をとると、二階の廊下の板が一枚はがれ、長い穴がぽっかりあいたままだった。 階下が見え空中を歩いているようで不安でだった。通された部屋は畳のワラがはみ出し傾斜しているので、横になると隅の方へ転げて行きそうであった。 隣室との境の襖もぼろぼろに破れている。(略) つまらぬところへ来てしまったと後悔した。(略) 思わず寒々とし、寂寥とした気分が胸に迫り、人生の涯、旅路の涯に来たような絶望的な気分に落ち込んでしまった。

中略

今度また湯宿に来てしまった。これが二度目ではない。何度も来ているのだ。何を好んでと言われても答えようがない。ふと思い出すと来てしまうのだ。 その都度寂寥とした思いになるわけではないが、妙に馴染めるのだ。 ふらりとやって来て、何をするでもなく、宿でごろりと横になっているだけでいいのだ。 みすぼらしく侘しげな部屋にいると何故がふさわしいように思え、自分は「本当はここでこうしていたのかもしれない」というような、そんな気分になるのだ。


このように、なんとも酷い言いようだが、実際作中の九割は湯宿の悪口がつらつらと書かれている。 しかしその鄙びた情景が堪らなく、何度も訪れるほどに気に入ったと言う。



※上記の文章の引用元。
下記の本に収録されています。

貧困旅行記 (新潮文庫)貧困旅行記 (新潮文庫)
つげ 義春

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※湯宿温泉大滝屋旅館が元になった「ゲンセンカン主人」が収録されています。
その他、つげ義春の代表作が多数収録されているので一読あれ。

つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)
つげ 義春

筑摩書房 2008-10-08
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先ほどのつげ義春の紀行文は昭和43年の体験であり今では旅館はどれも綺麗になっている。
しかしかつての鄙びた湯治場の面影は今も残り、特に大滝屋旅館への小路はまるで昭和の時代にタイムスリップしたような感覚を覚える。








つげ義春が足しげく通う湯宿温泉。
時代は違えど、湯宿に惹かれる気持ちは私にも分かる。










今では温泉街に石畳が敷かれ清潔に整備されている。
温泉街なのに娯楽施設は何もない。
ワイワイ騒いで飲み歩きたい人には向かないが、静かにしんみり過ごした人にはうってつけの温泉。















群馬県の中ではあまり目立たない湯宿温泉。
その魅力は訪れた人にしか分からない。
そして何気に宿泊料が安いので気楽に泊まれる。

石畳の小さで温泉街、湯宿温泉。
静かにまったり、泊まりに来てはいかがだろうか。





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